「指先の泡が割れていく。」
今日は一段と冷え込む朝を迎えた。
この時期にしては強い寒気の影響らしい。
紅葉の木々の間に見かける
柿の実の影が深くなり、
いよいよ冬の到来を感じる。
「指先の泡が割れていく。」
6時を知らせるテレビの声を背に
散歩に出た私の手は次第に
赤みをおびていった。
指先はじわじわと感覚を失い
数分前まで暖かい空気を
含んでいた空気の泡が
指先でプツプツと割れていくような感覚、
そして冷たい空気が
すうっとその泡に取り込まれていく、
なんとも繊細な寒さが身に堪える。
心なしかここ数ヶ月で
自分の感覚が鋭くなったように思う。
見ること
聞くこと
食べること
「感じる」という
外の世界と自分をつなぐチューナーの精度が
あがったのかもしれない。
あるいは「感じる」に対する
自分の思考が整理され、
より言語化できるようになったから
なのかもしれない。
感じることは生きること。
生きることは感じること。
自分の直感を信じよう。
自分の感覚を大切にしよう。
自分と自分をつなぐ世界を尊重しよう。
朝の散歩中に
私はカリンの実をひとつ拾いあげた。
実は熟しきったのか
全体が黄色がかり、
甘美な香りを漂わせている。
家に戻り丁寧に洗った手のひらからは
未だにカリンの香りが漂っている。
指先で割れた空気の泡。
どうやら今度は
熟した黄色の実の香りが
入り込んだようである。
2コメント
2021.12.16 19:45
2021.12.11 12:40